フォルクスワーゲン(VW)ディーゼル車の規制すり抜け問題は、ここ英国でも連日のトップニュースになっている。
VWの発表では、英国で販売されたVW、アウディ, Scoda, Seatのディーゼル車、計120万台もの車が、問題のソフトを掲載していたようだ。
英国では、対象になる新車は、本日付けで販売一時中止に追い込まれた。
VWと言えば、GOLF。 GOLFといえば、英国で長年に渡って最も人気がある車種である。ガソリンを食わず、小型車で排気量が少なくても高速道もスイスイ走れて、故障しても部品交換が簡単で、部品代も安いので保険代も安い! 排ガスCO2を殆ど出さないので、道路税も無料。 つまりランニングコストが安く、定番なので、中古になっても値崩れしないと評判の車だ。
その中でも、最新車種の、GOLF TDi 1.6リッター(2リッター)モデルのマニュアル駆動+ディーゼル車は、ハイブリット車を上回るリッター30㎞走る燃費の良さで、超エコ!ということで、英国でも大人気だった。それが不正プログラムを利用して、排ガスをまき散らした上で得られた性能だったとは…。
英国の検査当局と長年付き合ってきた「Japan Cars」の視点から見ると、これはVWの問題だけでなく、EUの規制当局と、欧州メーカーの癒着問題にある。
日経Webに以下のような興味深い記事が載っていた。
(引用)トヨタ自動車が数年前から、独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車の排ガス性能に疑問を持ち、欧州の規制当局に取り締まりを要請していたことが「日経エコロジー」の取材で明らかになった。
背景にはディーゼル車の開発において、VWと同じような燃費や走行性能を求めると、排ガス性能が発揮できなかったことがある。競合他社のデータと比べてもVWが不正ソフトを使っていなければ説明できないデータだったという。
しかし、規制当局は動かなかった。実際、2013年の欧州委員会共同研究センターの調査で、不正ソフトを見つけていたと欧
米メディアが報じている。EUではこうしたソフトは以前から違法としていたが、「規制当局は問題を追及しなかった」(英紙フィナンシャル・タイムズ)という。(引用ここまで)
つまり、車メーカーは他社の技術をこっそり研究してるから、他社の車が怪しげな規制逃れをしていれば、すぐにバレる。だから、排ガスを調べたメーカーは、EUの規制当局に不正を疑う文章を送っていた。それを、EU規制当局はガン無視してたというわけ。
それもそのはず・・・
EU規制当局の目的のひとつは「欧州自動車産業の競争力を強化し持続的な発展を推進するため」にある。
つまり、EU規制は、日本車の輸入障壁として存在し、EU市場を日本メーカーに奪われることから守り、欧州メーカーを応援するために存在してるってこと。
だから、日本のメーカーがいくら文句言ったって、EU当局は「聞こえない」ふりをしていたのです。
今回は、アメリカの政府レベルとマスコミが騒いだから、EU規制当局も渋々、問題の解明に動かざるを得なくなった。
まぁ、EUに限らず、各国も、車の輸入規制を作っているわけで…。他国の政府の決め事だから、民間の会社が文句言っても何にもならないので、日本の政府組織が動いて、政府レベルで文句言ってくれないと始まらないのですが、日本政府が何か対抗措置をしてくれてる様子が見えない。日本車の輸出がしやすくなれば、日本のGDPだって上がるのだから、規制してる各国に強く抗議してもらいたいものですが…。
ちなみに、車のEU基準は、EU加盟国全域に法的に支配し、基準を達成する手法は各国の規制当局が決めています。英国ではVCAという政府組織がEU基準に照らして英国基準を作り、DVSAという組織が、英国基準に沿って、新車や輸入車などの車のテストを担当しています。英国の車基準も、あからさまな日本輸入車対策の一面があるので、当局の職員は弊社に向かって「日本車の商業輸入はするなよ!」と、脅してきます(笑)
「Japan Cars」は、この英国基準(数か月毎にコロコロ変わる)と戦いを強いられていますが、技術力で乗り越えています。(それにしても先月から厳格化されたフォグライト規制は厳しすぎて涙目になります)
ということで、EU規制当局による「欧州メーカー寄りのEU基準作り」「日本輸入車イジメの実態」のリンクが、このVWディーゼル不正によって明らかにされるといいなぁと思います。